採用活動は企業の成長に直結する重要な業務ですが、現場の担当者にとっては大きな負担となりがちです。求人広告の作成から応募者の対応、面接の日程調整や内定者フォローまで、細かいタスクが多く存在します。そのため「採用に割く時間が足りない」「専門的な知識がない」と悩む企業も少なくありません。こうした課題を解決する手段として注目されているのが、採用代行(RPO:Recruitment Process Outsourcing)です。しかし、導入を検討する際に必ず浮かぶのが「費用はいくらかかるのか」という疑問です。
本記事では、採用代行の費用相場や料金体系の種類、費用を左右する要因、メリットと注意点、そして業者選びのポイントまでを徹底的に解説します。
採用代行とは何か

採用代行(RPO)は、採用に関わる業務を一括または部分的に外部の専門業者に委託する仕組みです。単なる事務作業の代行にとどまらず、求人広告の運用、応募者のスクリーニング、面接設定、さらには採用ブランディングや選考フローの改善といった戦略的な支援も含まれます。
企業は自社で抱えるリソースの制約を補い、採用活動を効率的かつ効果的に進めることができます。
企業が導入を検討する背景
採用代行のニーズは年々高まっています。その背景には次のような理由があります。
採用担当者の工数削減ニーズ
採用活動は膨大な工数を必要とします。特に中小企業では担当者が総務や人事全般を兼務しているケースが多く、応募者対応や日程調整に追われて本来の採用戦略に時間を割けないことがあります。採用代行はこうした負担を軽減し、戦略的な業務に集中できる環境を整える役割を果たします。
採用競争の激化による母集団形成の難しさ
少子化による人材不足や転職市場の活性化により、優秀な人材を確保する難易度は高まっています。従来の求人広告だけでは応募者が集まりにくく、採用代行を活用してスカウトやダイレクトリクルーティングなど幅広い手法を組み合わせる企業が増えています。
社内に採用ノウハウが不足している
採用の成功には、求人票の書き方や選考フローの設計といったノウハウが不可欠です。経験の浅い担当者だけでは成果を出すのが難しい場面も多いため、専門業者に頼ることで短期間で効果を高めることが可能になります。
業務範囲
採用代行の業務範囲は非常に広いです。具体的には以下のような業務が含まれます。
- 採用計画の立案
- 求人広告の出稿・管理
- ダイレクトリクルーティングの実施
- 応募者対応・書類選考
- 面接日程の調整
- 面接官へのフィードバック共有
- 内定者フォローや入社手続き
企業は必要に応じてこれらの業務を部分的に外注することも、包括的に任せることもできます。
採用代行の費用相場

採用代行サービスを導入する際、多くの企業が最初に確認するのが「費用の目安」です。コストは採用区分や業務範囲によって大きく異なります本章では、新卒・中途・アルバイトなど、それぞれの採用形態ごとの一般的な相場を整理します。
全体的な相場観
採用代行の料金は、依頼する内容や採用のボリュームによって変動します。
たとえば、応募者対応や面接調整といった限定的な業務支援であれば、月額5万〜15万円前後で依頼できるケースが多いです。一方で、求人企画から内定フォロー、効果検証までを一括して任せるフルアウトソースの場合は、月額30万〜80万円程度に達することもあります。
採用の目的・人員計画・社内リソースを踏まえ、どの範囲を委託するかを明確にすることが、費用対効果を高めるポイントです。
新卒採用における費用目安
新卒採用は、広報活動から内定者フォローまでの期間が長く、サポート範囲も広いため、コストが比較的高くなる傾向があります。
相場は月額5万〜70万円程度が一般的で、合同説明会の運営支援やエントリー管理、内定者向けのコミュニケーション設計などを含む場合はさらに上がることもあります。
年度によって採用人数や活動時期が異なるため、早い段階で複数の代行会社から見積もりを取得し、比較検討することが望ましいでしょう。
中途採用における費用目安
中途採用では、限られた期間で自社に適した人材を確保する必要があるため、スピードと精度の両立が求められます。そのため、支援内容に応じて費用も変化し、一般的には月額10万〜80万円前後が目安です。
特に専門職や管理職の採用は難易度が高く、より高度な選考サポートを要する分、コストも上がりやすい傾向にあります。また、成果報酬型を選択する場合には、採用1名あたり60万〜120万円前後の成功報酬が発生することもあります。
アルバイト・パート採用における費用目安
店舗運営や短期イベントなどで多人数の採用が必要な場合、アルバイト・パート向けの採用代行を活用する企業も増えています。費用は比較的低く、1万〜30万円程度が一般的な目安です。主な業務は応募受付、面接調整、求人媒体の運用代行など、事務的なサポートが中心となります。
正社員採用に比べて業務範囲が限定されるため導入しやすく、特に繁忙期の採用業務の効率化に有効です。
参照:株式会社アールナイン「【2025年最新版】採用代行(RPO)の費用相場|料金体系・雇用形態・運営形態別に徹底解説」
料金体系の種類と特徴

採用代行サービスの料金体系には複数の形式があり、それぞれに特徴があります。どの方式を選ぶかによってコスト構造や契約リスクが変わるため、自社の採用計画やリソース状況を踏まえた選定が重要になります。
月額固定制
月額固定制は、あらかじめ定めた金額を毎月支払う方式です。支出が一定のため、年間予算の見通しを立てやすく、継続的な採用活動を進めたい企業に適しています。
一方で、成果が思うように得られない月でも費用が発生する点には注意が必要です。採用業務のボリュームや頻度が比較的安定している企業、または長期的な採用体制を整えたい場合に向いた料金形態といえます。
成果報酬型
成果報酬型は、採用が確定した段階で報酬が発生する仕組みです。成果に応じた支払いのため、初期費用を抑えながら試験的に導入できる点が魅力です。
ただし、1名あたりの報酬単価は比較的高く設定される傾向があり、とくに専門職や管理職の採用では負担が大きくなる場合もあります。確実な採用成果を得たい企業や、採用リスクを最小限に抑えたい場合に適しています。
従量課金制(工数制・時間制)
従量課金制は、依頼した作業量や稼働時間に応じて費用を支払う仕組みです。必要な期間だけ依頼できるため、繁忙期や短期プロジェクトの採用支援に柔軟に対応できます。
一方で、業務量の増減によって請求額が変動するため、契約前に上限や想定作業範囲を明確にしておくことが重要です。突発的な採用ニーズにも対応しやすい、機動性の高い料金体系といえるでしょう。
採用代行の費用が変動する要因

同じ採用代行でも、金額は一律ではありません。依頼内容や体制、求める人材の性質によって大きく上下します。ここでは、費用に差が出やすい代表的なポイントを整理しておきましょう。
委託範囲
どの範囲まで業務を外部に任せるかで、必要なコストは大きく変わります。応募者対応や面接日程の調整といった部分的な作業を委託する場合は、比較的負担が少なく済みます。
反対に、採用戦略の策定から面接実施、内定後フォローまでを包括的に依頼する形になると、関与する工程が増えるため、金額も上がるのが一般的です。自社の体制や課題に応じて、どこまでを委託するかを明確にしておくことが望ましいでしょう。
採用人数・採用難易度
採用する人数や職種の専門性によっても、費用は変動します。募集人数が多ければ処理件数が増え、選考に関わる事務工数も膨らみます。結果として、全体の支出が高くなるケースが多いです。
また、高度なスキルや経験を求める職種は候補者数が限られ、採用活動が長期化する傾向があります。特にITエンジニアや管理職などは、競争が激しく、1人あたりのコストが上がりやすい領域といえるでしょう。
契約期間の長さ
契約の期間も、見積もりに影響します。短期契約は柔軟に利用できる反面、単価が割高になる傾向が見られます。一方で、半年〜1年といった長期契約を前提にする場合、月額単価が抑えられるケースも少なくありません。
繁忙期限定での利用か、通年で支援を受けるのかを事前に整理し、費用対効果を踏まえた契約期間を設定することが大切です。
業者の実績・ブランド力
依頼先の実績やブランド力も、費用を左右する要素のひとつです。経験豊富な大手業者は、対応品質や安定感に強みがありますが、その分料金が高く設定されることがあります。
ただし、実績に裏づけられたノウハウや、万全のサポート体制を評価する企業も多く、価格だけでは判断しきれません。コスト面だけでなく、信頼性・再現性・支援範囲といった総合的な視点で比較することが欠かせないでしょう。
採用代行を利用するメリット

採用代行を導入することで、業務効率の改善だけでなく、採用活動そのものの質を高めることができます。 ここでは、以下の4つのメリットを解説します。
- 採用業務の効率化と担当者負担の軽減
- 採用の質向上とミスマッチ防止
- 専門ノウハウの活用による改善効果
- 柔軟に業務範囲を選べる利便性
採用業務の効率化と担当者負担の軽減
採用活動では、応募者対応や面接日程の調整、求人媒体の管理など、細かな事務作業が多く発生します。こうした作業を採用代行に任せることで、担当者は煩雑なオペレーションから解放され、戦略立案や人材定着策など、より価値の高い業務に時間を割くことができます。
また、業務の抜け漏れや属人化の防止にもつながり、採用全体のスピードと品質を安定的に維持できる点も大きなメリットです。
採用の質向上とミスマッチ防止
採用代行を活用すると、経験豊富な専門家が関与することで、選考プロセスの精度が高まります。職種や企業文化に合わせた評価基準の設計や、面接官トレーニングの実施により、候補者の適性をより正確に見極められるようになります。
その結果、入社後の早期離職を防ぎ、長期的に活躍できる人材を確保しやすくなります。採用活動全体の質を底上げする効果が期待できる点が大きな利点です。
専門ノウハウの活用による改善効果
採用代行会社は、さまざまな業界や企業規模での支援実績を持っており、その知見をもとに最適な改善策を提案してくれます。自社内では気づきにくい課題を客観的に分析し、求人票の見直しや応募導線の改善、面接フローの最適化など、具体的な施策を提示してもらえる点が強みです。
専門的なノウハウを取り入れることで、採用活動の精度や効率を継続的に向上させることができます。
柔軟に業務範囲を選べる利便性
採用代行は、自社の状況に合わせて業務範囲を柔軟に調整できる点が大きな特徴です。たとえば、繁忙期のみ応募対応を任せたり、特定職種の採用だけを依頼したりといった部分的な活用も可能です。逆に、採用全体を包括的に委託する形も取れます。
必要な期間・範囲で利用できるため、無駄なコストを抑えながら効率的に採用活動を進められる点が、企業にとって大きな利便性といえるでしょう。
採用代行を利用する際のデメリット・注意点

採用代行は業務効率や採用精度の向上に大きく貢献しますが、導入方法を誤ると期待した成果を得られない場合があります。契約内容や運用体制を十分に理解していないと、思わぬコスト増や認識のズレによるトラブルを招くこともあります。ここでは、代表的な3つの注意点を確認しておきましょう。
- 費用負担が発生するリスク
- 自社に採用ノウハウが蓄積しにくい
- 契約範囲や成果基準の曖昧さによるトラブル
費用負担が発生するリスク
採用代行を活用する際は、外部委託に伴う費用をあらかじめ想定しておく必要があります。成果報酬型を採用している場合、採用が成立した時点で一定の報酬が発生し、採用数が増えるほど総コストが膨らむ可能性があります。
さらに、長期契約を結ぶケースでは月額固定費が継続的に発生するため、短期間で結果が出ないと費用対効果が見えにくくなることもあります。契約前に料金体系や支払い条件を明確に確認し、想定外の出費を防ぐ工夫が求められます。
自社に採用ノウハウが蓄積しにくい
採用代行に依存しすぎると、採用プロセスの知見やノウハウが社内に蓄積されにくくなる点にも注意が必要です。応募対応や選考管理を業者任せにしていると、担当者が実務の全体像を把握しにくく、将来的に採用を内製化する際にスムーズに引き継げない可能性があります。
また、採用戦略の立案や面接基準の策定など、企業独自の判断力を育てる機会が減ることも課題です。委託業務の範囲を定期的に見直し、社内共有を意識した運用を行うことが望ましいでしょう。
契約範囲や成果基準の曖昧さによるトラブル
契約時に業務範囲や成果の定義を明確にしておかないと、後々のトラブルにつながる恐れがあります。たとえば「どの工程を業者が担当するのか」「成果をどの指標で評価するのか」といった点が不明確なままでは、期待した成果が得られず、追加費用の発生につながるケースも少なくありません。
こうした問題を防ぐためには、契約前に具体的な作業内容・納品基準・報告体制を文書で取り交わし、双方の認識を丁寧にすり合わせることが重要です。
成果につながる採用代行業者を見極める3つのポイント

採用代行を効果的に活用するには、どの業者に依頼するかを慎重に見極める必要があります。コストの比較だけで判断するのではなく、自社の採用課題や目的に合致したパートナーを選ぶことが、最終的な成果を左右します。ここでは、信頼できる業者を選定するための3つの重要な視点を整理します。
自社の採用課題を明確にする
最初に取り組むべきは、自社が抱える採用上の課題を具体的に整理することです。応募数が少ないのか、面接で辞退が多いのか、あるいは入社後の定着率に問題があるのか、原因を特定することで、どの工程を外部に任せるべきかが見えてきます。
課題を曖昧にしたまま委託すると、成果が得られにくいだけでなく、コストの無駄にもなりかねません。採用プロセスを客観的に分析し、社内で担う部分と外注が有効な部分を見極めることが大切です。
費用だけでなく実績や対応範囲を見る
業者を選ぶ際には、金額の安さだけで判断するのは避けるべきです。対応できる業務範囲が限られていたり、支援実績が乏しかったりすると、採用活動全体のクオリティに影響が出ることがあります。
そのため、料金に加えて、過去の支援事例・得意分野・採用フェーズごとの対応力などを総合的に確認しましょう。自社の課題に近い事例を持つ業者であれば、ノウハウを活かした実践的な提案を受けやすく、結果的に費用対効果も高まります。
成果指標の設定と契約条件の確認
成果報酬型で契約する場合は、成果をどの段階で評価するのかを明確にすることが重要です。たとえば「内定通知の時点」なのか「入社後の定着を確認した段階」なのかによって、支払いの条件や金額が大きく変わります。
さらに、委託範囲・成果の基準・報告体制といった契約条件を事前にすり合わせておかないと、認識のズレがトラブルにつながるおそれもあります。双方で共通理解を持ったうえで契約内容を文書化することが、安定した成果を得るための基本です。
採用KPI・ROIの設計と効果測定の方法

採用代行を効果的に運用するためには、数値データをもとに成果を検証する仕組みが必要です。 KPIやROIを適切に設定し、定期的に振り返ることで、コスト効率と採用精度の両立を実現できます。
成果を測るための指標設定
採用活動の成果を正確に把握するためには、明確な指標を設定しておくことが欠かせません。たとえば、応募から面接への通過率や内定承諾率、辞退率、採用単価といった数値を継続的に追うことで、ボトルネックを可視化できます。
これらのKPIをもとに改善を重ねることで、採用効率と質の両面から成果を高めることが可能になります。
コストと成果のバランス分析
採用活動にかけたコストが、どの程度の成果につながっているかを把握することは非常に重要です。ROI(投資対効果)を算出することで、支出に見合った効果が得られているかを定量的に評価できます。
単に費用を削減するだけでなく、コストをどの工程に配分すれば成果が最大化するのかを分析し、次の採用戦略に活かすことが求められます。
定期的な振り返りと改善
KPIやROIの数値は、設定後も定期的に検証することが欠かせません。採用手法や応募者の傾向は時間とともに変化するため、データをもとに現状を見直し、改善策を反映させることが重要です。こうした継続的な検証が、採用活動の精度向上とコスト最適化につながります。
採用代行の費用対効果を最大化し、採用コストを有効な投資へと変える
採用代行を効果的に活用するためには、単に業務を外部に任せるのではなく、目的と成果を明確にしたうえで運用することが重要です。委託範囲を最適化し、KPIやROIといった指標をもとに定期的に振り返ることで、費用を“支出”ではなく“投資”として捉えることができます。
また、業者選定では費用の安さだけにとらわれず、自社の課題解決に強い実績やノウハウを持つパートナーを選ぶことが成果への近道です。採用代行を活用して戦略的な採用体制を構築したい企業は、ぜひ株式会社KAIZEN Tech Agentにご相談ください。
