エンジニアとしてキャリアを重ねるなかで、「SES」という働き方が選択肢として浮上してきた人もいるかもしれません。しかし、インターネット上ではSESのデメリットに関する情報も多く、不安を感じている人もいるでしょう。
SESエンジニアになることは、すでにエンジニア経験がある人にとっても新しいキャリアパスを切り開く魅力的な選択肢です。この記事では、SESのデメリットとその実態を解説し、デメリットとうまく向き合うための方法をお伝えします。
SESエンジニアという働き方を検討する上で、ぜひ参考にしてください。
SESのデメリットとその実態

SESエンジニアという働き方には、自社開発企業やSIerとは異なる特有のデメリットがあります。これらを事前に理解しておくことで、実際に働き始めたときに「こんなはずではなかった」と後悔することを避けられるでしょう。
ここでは、SESという業態ゆえのSESエンジニアがもつ代表的なデメリットとその実態について見ていきましょう。
給与や評価が上がりにくい
SESという業態は、多重下請け構造の温床になっていることが少なくありません。自分が関わっている案件が多重下請けの下層に位置する場合、案件の単価から中間マージンが引かれるため給与が上がりにくい傾向にあります。
またSESエンジニアは客先で働くことが多いため、自社のマネージャーや人事担当者が自分の働きぶりを直接見る機会がほとんどありません。そのため、客先からのフィードバックに評価が左右され、正当な評価がされにくいと感じる可能性があります。
自社への帰属意識が低く一体感が生まれにくい
SESエンジニアは普段は客先で働くため、SES企業に所属していたとしても自社のメンバーと顔を合わせる機会が少なくなります。
そのため、フリーランスでなくとも会社への帰属意識を持ちにくいというデメリットがあります。
また客先ではあくまで「外部の人間」という立場であり、プロジェクトの一員として迎え入れられても、客先の社員と完全に一体感をもつことは難しいと感じる人もいるでしょう。
このような帰属意識の低さが孤独感ややりがいのなさにつながることがある点はSESエンジニアのデメリットといえます。
スキルアップが自己責任になりがち
SESエンジニアは、配属される現場によって求められるスキルや開発環境が大きく異なります。しかし現場で業務を教えてもらうことがあっても、体系的なスキルアップを支援してもらえる機会は多くありません。
そのため新しい技術を学ぶことや、キャリアアップに必要なスキルを身につけることはSESエンジニア個人の自主的な学習に頼らざるを得ないのです。
自律的に学習計画を立て実行できる人でなければ、スキルアップが停滞し自身の市場価値が下がってしまう可能性があります。
キャリアパスが見えにくく不安を感じやすい
SESエンジニアはプロジェクトが変わるごとに仕事内容が変わるため、長期的なキャリアパスを描きにくいというデメリットがあります。
例えばAI開発に興味があっても、ずっとWeb開発の案件にアサインされ続ける可能性もゼロではありません。
自分のキャリアを主体的に考え、所属するSES企業に希望を伝えていかなければ、望まないキャリアに進んでしまうかもしれないのです。
SESのメリットは「経験」と「支援体制」

SESエンジニアという働き方にはデメリットがある一方、他の働き方にはない大きなメリットもあります。
デメリットばかりに目を向けるのではなく、メリットを最大限に活かした挑戦を行うことで自分のキャリアをより豊かにすることができるかもしれません。
ここでは、SESエンジニアのメリットを見ていきましょう。
多様な経験を積める
SESエンジニアの最大のメリットの一つは、一つの会社にいながらさまざまなプロジェクトや開発現場を経験できることです。
自社開発企業などでは特定の技術やサービスに特化して働くことが多いですが、SESエンジニアならさまざまな技術や開発環境に触れることができます。
これによって幅広いスキルセットを身につけ、自分に合った分野を見つけることができるでしょう。
支援体制がある安心感
SESエンジニアは、フリーランスでの登録も正社員や契約社員として雇用されることもあります。
例えば完全なフリーランスの場合、自分で営業活動を行わなければならず、また契約上のトラブルなどが起こった場合も自分でなんとかしなければなりません。
一方でSES企業に登録していれば、会社からの支援があります。
営業活動を行う必要はありませんし、問題が起こってもSES企業が間に入って解決のために動いてくれます。
このように支援体制があることは安心感につながるため、ほかの心配事に煩わされることなくエンジニアの本質である開発に専念することができるのです。
契約そのものがワークライフバランスが実現しやすいこともある
経験を積むことができ支援体制があることはSESエンジニアの働き方としての大きなメリットですが、SESにおける準委任契約そのものがメリットになりえることもあります。
多くの自社開発企業やSIerでは、プロジェクトの進捗によって残業や休日出勤が常態化することがありますが、SESの案件は契約内容が厳密に定められているため、過度な残業が発生しにくい傾向にあります。
これは、SESエンジニアの契約がクライアントと登録SES企業との間で労働時間や業務範囲が明確に決められている準委任契約が多いためです。もしクライアントから契約外の業務や過度な残業を求められた場合でも、所属するSES企業が間に入って交渉してくれるため、エンジニア自身の負担を軽減できます。
また、SES企業は複数の案件をもつため、プロジェクトが炎上しそうになったり、人間関係に悩んだりした場合でも、営業担当者に相談することで次の案件に移行できる可能性があります。これは、一つの会社に縛られずに、より良い労働環境を求めて柔軟に働くことができる大きな利点です。
このように、SESエンジニアの働き方は、ワークライフバランスを重視するエンジニアにとって大きなメリットをもたらす可能性があります。
SESのデメリットを解消するために必要なスキル

SESエンジニアとして働くことにはデメリットもあればメリットもあります。
どのような人がSESエンジニアに向いているか、またどのようなスキルを身につければデメリットを乗り越えてメリットを享受できるかについて解説します。
どんな環境にも適応できる柔軟性
SESエンジニアとして働いていると、アサインされる案件によってプロジェクトや人間関係が頻繁に変わります。そのため、どんな環境にも柔軟に対応できる適応力が必要です。
新しい職場や人間関係でも前向きに飛び込める人や、異なる企業カルチャーやルールを素直に受け入れられる人がSESエンジニアに向いています。
また、初対面の人とも円滑にコミュニケーションをとれる能力があるとプロジェクトやチームに馴染みやすいため活躍できるでしょう。
自社メンバーとも積極的にコミュニケーションをとる
可能であれば、常駐先だけでなく所属しているSES企業のメンバーとも積極的にコミュニケーションをとることが大切です。
業務外のチャットや定期的に所属元へ集まるイベントなどを活用し、所属SES企業のメンバーと交流することで会社への帰属意識を醸成できます。
また他のメンバーがどのような案件で働いているか、どんな技術を使っているかを知ることで、最新の技術トレンドや次に自分が挑戦したい案件についての情報を得ることもできます。
自律的に学習を進める
スキルアップが現場に任せきりになることが多いのがSESという業態のデメリットです。
そのため、自律的に学習を進められる人でなければ技術力が停滞してしまいます。
技術トレンドを追いかけたり学習計画を立てて実行できる人、そして自身のキャリアを主体的に考えて行動できる人は、SESエンジニアという働き方で成功をつかむことができます。
常駐先や所属元のSES企業にすべてを任せるのではなく、自分のキャリアは自分で築くという意識をもつことで停滞せずに最前線で活躍しつづけられるエンジニアになれるのです。
外部からの視点を活かす
SESエンジニアは常駐先企業の社員ではないため、客観的な視点をもつことができます。
これは企業の内部にいては見えない問題点や非効率な点を指摘できるという大きな強みです。常駐先の文化やルールに染まりきってしまうのではなく、馴染みながらもある程度は離れた視点で業務を行うようにしましょう。
そうすることでプロジェクトに新たな価値を提供できるだけでなく、多面的な提案を行って実行していく経験により自身の市場価値を高めることにもつながります。
ビジネス意識を身につける
SESエンジニアとして、自身の技術力がクライアントのビジネスにどのように貢献しているかを理解するビジネス意識を身につけることも重要です。
単にクライアントから与えられたタスクをこなすだけでは、自分の市場価値を上げることは難しいでしょう。
例えばクライアントが直面している課題を正確に理解し、その課題を自分がもつ技術でどのように解決できるかを考え提案できるエンジニアは重宝されます。これはクライアントのビジネス目標や戦略を把握し、自身の技術をその目標達成に結びつけるという意識があって初めて可能になります。
こうした視点をもつことで、単なる「技術提供者」から「ビジネスパートナー」へと立場を変えることができ、より裁量権のある役割を任されるようになります。また、クライアントから直接感謝されることも増え、仕事のやりがいにもつながります。結果としてより高単価な案件を任されるようになり、自身の給与アップにもつながるでしょう。
後悔しないためのSES企業選びのポイント

SESエンジニアとして後悔しないためには、所属する企業選びがもっとも重要です。優良なSES企業を選ぶことで、SESエンジニアとしてのデメリットを最小限に抑え、メリットを最大限に活かすことができます。
ここでは、後悔しないための企業選びのポイントを解説します。
エンジニアファーストの姿勢を明確にもつ企業
エンジニアを「会社の資産」として大切にする姿勢をもつ企業を選びましょう。
SES企業にとっては、登録しているエンジニアこそが最大の資産であり、それを理解している企業には優秀なエンジニアが集まりやすくなります。優秀なエンジニアがいれば、優良クライアントが集まりやすくなります。すなわち、エンジニアファーストの姿勢をもつ企業が結果的に「SESの優良企業になる」といえるのです。
単に案件を売るだけでなく、エンジニアのキャリアプランや希望を尊重してくれる企業です。登録時の面談などの際に、自分のキャリアや将来の希望について話す時間を設けてくれるか、またその希望に対して具体的にどのような案件があるかを提示してくれるかどうかを確認してみましょう。
上記に加えて、エンジニアの働きやすさを考慮し、無理なアサインをしない企業も優良企業といえます。残業時間や休日出勤の有無、リモートワークの可否など、働き方に関する希望を伝え、企業の対応を確かめることが大切です。
透明性の高い評価・還元体制があるか
給与や評価の仕組みが不明瞭な企業は、エンジニアの不満につながりやすくなります。そうなると優秀なエンジニアから登録を解除していき、結果的に優良クライアントも離れて行ってしまいます。
SESの優良企業は、クライアントからの単価やエンジニアへの還元率、評価基準などを明確にしています。自分のスキルや経験がどのように評価され、それがどのように給与に反映されるのかを事前に理解しておくことで、納得して働くことができます。
例えば契約内容をエンジニアに共有してくれる企業や、還元率を明確に提示している企業はエンジニアとの信頼関係を築こうと努力している企業といえるでしょう。これらの情報をオープンにしている企業であれば、安心してキャリアを任せられる可能性が高いといえます。
フリーランスSESエンジニアという働き方も候補の一つ

SESのデメリットを解消する方法として、正社員としてSES企業に所属するのではなく、フリーランスとしてSES企業と契約するという選択肢もあります。
この働き方は、フリーランスと正社員SESのそれぞれのメリットを組み合わせた新しい選択肢であるといえるでしょう。
フリーランスSESエンジニアにはどのようなポイントがあるのか、ここで解説します。
フリーランスSESエンジニアの魅力とは
フリーランスSESエンジニアは、正社員と比べて高い報酬を得られる可能性が高くなります。
契約形態が異なるため、会社が受け取る案件の単価から会社の取り分を差し引いた金額を、会社員よりも高い割合で受け取ることができるからです。
また、正社員SESのように会社からの指示で案件をアサインされるのではなく、自分で案件を選ぶ自由度が高いことも魅力です。自分のスキルや興味のある分野に特化した案件を選べるため、より主体的にキャリアを築くことができます。
正社員SESとの違いを理解する
フリーランスSESエンジニアは、正社員のように会社からの福利厚生や社会保険のサポートを受けることができません。そのため、自分で税務処理や社会保険の手続きを行う必要があります。
しかし多くのSES企業がフリーランスエンジニア向けのサポート体制を整えています。例えば、税務処理の代行サービスや福利厚生サービスを利用できる企業もあります。
これらのサポートを利用することで、正社員のように開発業務に集中しながら、フリーランスの高い自由度と報酬を享受することができるのです。
デメリットを知ることは理想のキャリアへの第一歩
SESエンジニアとして働くことのデメリットをただ避けるのではなく、その実態を理解した上で、自分に合っているかどうかを検討する事が重要です。
そしてSESエンジニアが合っていると感じたなら、ぜひメリットを最大限に活かしつつデメリットを軽減しながら働ける環境を探してみてください。
私たちKAIZEN Tech AgentもSES企業として登録してくれたフリーランスエンジニアのみなさんと一緒に仕事をしており、エンジニアの成長に寄り添った案件紹介を行っています。
ぜひ私たちと一緒にSESエンジニアのデメリットをメリットに変え、理想のキャリアを目指しませんか。
