SESエンジニアとして働いている方のなかには、自分の単価がいくらか知りたいと感じている方もいるかもしれません。

教えてもらえるなら問題ありませんが、会社に聞いても教えてもらえず、不透明さに不満を感じているケースもあるでしょう。

しかし単価を教えてもらえないからといって、悲観的になる必要はありません。単価の不透明さに悩まされずに自分の市場価値を高めていく方法はあります。

この記事では、なぜSESで単価を教えてもらえないのかを解説し、単価を知らなくても自分の価値を高める方法をお伝えします。

なぜSES企業はエンジニアに単価を教えないのか

SESエンジニアの単価は、クライアントに提供される技術力や労働時間に対して支払われる報酬です。

しかし実は、ほとんどのSES企業はエンジニアに単価を教えてくれないのが現実です。

まずは、そのような状況が起こってしまう背景にある構造的な理由を知っておきましょう。

感情的な不満だけでなくビジネスの側面を理解することで、問題を客観的に捉えられるようになります。

商流が複雑でエンジニアには開示されない契約の場合もある

SES業界では、クライアント企業、元請け、下請け、そして自社といった多重下請け構造になっているケースがあります。このような場合、各企業間で結ばれる契約には単価や契約内容に関する守秘義務が盛り込まれていることがあります。

実は「契約上の理由からエンジニアに単価を開示できない」という場合もあるのです。

また商流が複雑になるほど中間マージンが多岐にわたり、どこかの会社が「非開示」の契約の場合、下流では元の単価を知ることが難しくなります。。

このようにクライアントとの守秘義務契約によってやむを得ず単価が非公開になっているケースもあるのです。

会社の利益構造や還元率を隠したいという思惑

単価を教えてくれない理由の一つに、会社の利益構造や還元率を隠したいという思惑があります。単価を公開すると、エンジニアはそこからどれくらいの割合が自分の給与として支払われているのかを計算できてしまいます。

もし会社の還元率が低い場合、エンジニアの不満が高まり離職につながる可能性があります。そのため単価を非公開にすることで、エンジニアが不満を抱くきっかけをなくそうとするのです。

評価制度が単価に連動していない場合

多くのSES企業では、エンジニアの単価と給与が直接連動していません。評価制度が「会社への貢献度」や「勤続年数」といった、単価とは直接関係のない要素に重点を置いている場合、会社側は単価を開示することのメリットが少なくなります。

単価を公開すると、エンジニアは「なぜ自分の単価が高いのに給与が上がらないのか」という疑問を抱き、不満につながる可能性があります。評価制度が単価と紐づいていない場合、会社側は単価を非公開にすることで、このギャップから生じるエンジニアの不満を防ぎたいと考えるのです。

このような理由で単価を教えないのは、正社員型のSES企業でよくあるケースです。

エンジニアの定着率を上げたいという目的

SES企業が単価を教えないのは、長期的にエンジニアに定着してほしいという目的がある場合もあります。単価を知ることで、エンジニアは自分の市場価値を意識するようになり、より高い単価を求めて転職したり登録変えをする可能性が高まります。

特に若手や中堅エンジニアは短期間でスキルアップし、市場価値が急上昇することがよくあります。そのタイミングで単価を知ってしまうと、自分の給与が市場価値に見合っていないと感じてしまい、すぐに退職してしまうかもしれません。会社側は単価を非公開にすることで、給与の不満を和らげ、エンジニアに長く働いてもらいたいと考えるのです。

単価を教えてもらわなくても市場価値を把握する方法

単価を教えてもらえないからといって、自分の市場価値が分からないわけではありません。

むしろ契約上の問題で単価を知ることができないにも関わらず、それを理由に自分の市場価値を知ろうとしなければキャリアが停滞してしまう原因になりかねません。

単価を教えてもらえないことでキャリアの機会損失をしてしまわないよう、客観的に自分の価値を把握する方法を試してみましょう。

類似案件の求人情報を徹底的に調べる

自分のスキルや経験に似た案件を、転職サイトやフリーランス向けエージェントで探してみましょう。

多くの求人情報には、スキルや経験に応じた単価の目安が記載されています。これにより、自分が市場でどれくらいの価値があるのかおおよそ把握できます。

案件内容と役割から相場を推測する

担当しているプロジェクトの内容から、単価の相場を推測することも可能です。

例えば、業界、使用している技術(クラウド、AI、特定のフレームワークなど)、プロジェクト内での自分の役割(プロジェクトマネージャー、リーダー、メンバー)などを分析します。

一般的に需要が高く専門性の高い技術や、責任範囲の大きい役割ほど単価は高くなる傾向にあります。

なお、相場としてはシステムエンジニア(受託開発)の平均年収は574.1万円とのことなので、参考にしてみてください。

参考:厚生労働省 職業情報提供サイト「システムエンジニア(受託開発)

スキルセットと収入のバランスを分析する

単価が分からなくても、自分のスキルセットと現在の収入が市場相場に見合っているかを客観的に判断できます。

同じようなスキルや経験をもつエンジニアの平均年収を転職サイトなどで調べ、自分の収入と比較してみましょう。もし収入が相場よりも大幅に低い場合、単価も同様に低い可能性があります。

技術コミュニティでの情報収集と交流

自分の単価を推測する上でもっとも正確な情報源の一つは、同じ技術分野で働くエンジニアたちとの交流です。オンラインの技術コミュニティやオフラインの勉強会、ミートアップに積極的に参加してみましょう。

直接的に「単価はいくらですか?」と聞くのは失礼にあたりますが、業界の動向や技術ごとの市場価値、転職時の年収交渉のポイントなど、価値ある情報を得ることができます。

またこうしたコミュニティでの活動は、自身のスキルを客観的に評価してもらう良い機会にもなります。

 

SNSやブログでの情報発信

自分のスキルや学習内容をSNS(例:X、Qiita)や技術ブログで積極的に発信することも市場価値を把握する上で有効です。

アウトプットすることで自分の知識を整理できるだけでなく、業界のキーパーソンや他のエンジニアからフィードバックをもらえる機会が増えます。

また発信内容が評価されれば、企業やエージェントから直接スカウトが届くこともあります。これにより、自身のスキルが市場でどれだけ評価されているかを実感できるでしょう。

単価の不安を解消してキャリアを前進させる行動

単価を教えてもらえない状況下でも、漠然とした不安を解消し、自分のキャリアを主体的に動かすための行動はとれます。

大切なのは「個別案件の単価」ではなく「自分の市場価値」です。

単価を「知る」ことに固執するのではなく、単価を「高める」ことに意識を向けることが大切であるといえるでしょう。

自身のスキルを磨き続ける

単価が分からなくても、市場価値を高めるためのスキルアップは可能です。今後市場で評価される技術を自律的に学習し、新しいスキルを身につけましょう。

例えば、クラウドサービス(AWS、GCP)や、AI・データサイエンス関連のスキルは需要が高く、単価アップにつながりやすいといえます。

営業担当者とキャリアプランを共有する

単価を直接聞くのではなく、自分のキャリアプランや挑戦したい技術を営業担当者に伝えましょう。そうすることで、担当者はあなたの希望に沿った案件を探すようになります。

単価という数字だけでなく、自分の成長につながる案件にアサインしてもらうことで、結果的に市場価値を高められます。

転職も視野に入れる

もし単価の不透明さが我慢できない、会社のサポート体制に不安があると感じるなら、透明性の高い企業への転職も選択肢の一つです。

単価やエンジニアへの還元率を明確にしているSES企業も存在しています。

ただしそういった企業は数が少ないため、必ずしもすぐに転職が成功するかというと難しいといえるでしょう。

単価を教えてもらえるSES企業への転職は、別の対策や自分の市場価値を高める行為と平行して行うのがおすすめです。

不信感がないSES企業へ登録する

エンジニアに単価を教えない理由の一つに、エンジニアへの低い還元率を隠したいという思惑があります。

ですが結局は、エンジニア側が満足した収入を得ることができ、SES企業が取り分に対して満足いく支援を行ってくれれば問題ないのではないでしょうか。

自分が思う自分の市場価値よりはるかに低い収入しかなく、その上単価を教えてくれず、しかもサポート体制に不満があるから、「単価を教えてほしい」と強く感じるのです。

信頼できるSES企業に登録し、満足いく収入を得られるのであればそのような不満は抱かないでしょう。

たとえ単価を教えてもらえなくても、支援体制がしっかりしていて信頼できるSES企業に登録すれば、納得しながら働くことができます。

透明性の高い優良SES企業を見極めるポイント

もし単価の不透明さが不満の大きな理由なのであれば、単価や還元率を明確にしている、信頼できる優良なSES企業を探すことが解決策になります。

しかし口頭で「還元率が高いです」と説明されても、それが事実かどうかを判断するのは難しいものです。ここでは、優良企業を見極めるための具体的なポイントを解説します。

契約形態とマージン率の開示

優良なSES企業はクライアントとの契約形態や、会社が受け取るマージン率を明確に開示しています。

入社面接や登録時面談の際に、こうした情報を積極的に聞いてみましょう。

例えば以下のような質問です。

  • 給与還元率はどのくらいですか?
  • クライアントからの単価に対して、どのように給与が決まるのですか?

上記のような質問をすることで、会社の透明性を測ることができます。

完全に単価金額を開示してくれないまでも、具体的な数字を提示し、納得いく説明をしてくれる企業は、エンジニアを大切にしている証拠です。

営業担当者の質とキャリア支援体制

営業担当者の質は、SES企業を選ぶ上で重要な要素の一つです。エンジニアの技術やキャリアプランを深く理解し、それに合った案件を提案してくれる営業担当者がいるかどうかを確認しましょう。

面接時に以下のような質問をしてみましょう。

  • どのような案件を扱っていますか?
  • 私のスキルだと、どのような案件が紹介されますか?

これによる返答で、営業担当者の能力を測ることができます。

また、定期的なキャリア面談の有無や、技術的な悩みを相談できる窓口があるかどうかも重要なポイントです。エンジニアのキャリアを会社側が把握でき、より適した案件を紹介してもらえる可能性も高くなります。

エンジニアへの還元率と評価制度

単価の不透明さだけでなく、給与体系がどうなっているかも重要な判断基準です。給与還元率が高いことはもちろん、評価制度が透明で納得できるものであるかが重要です。

例えば以下のような質問で確認できます。

  • 資格手当はありますか?
  • チームや会社への貢献はどのように評価されますか?

これらの質問を通じて、評価制度の公平性を確認しましょう。エンジニアのがんばりが正当に評価され給与に反映される仕組みがある会社であれば、たとえ単価を教えてもらえなくても納得しながら長く働き続けることができます。

自分の単価を上げるための効果的な交渉術

単価を知らなくても、自分の市場価値を上げることで結果的に収入を増やすことは可能です。単価を上げるための交渉は、そのための重要なステップといえます。

ここでは、会社に対して自分の単価を上げてもらうための効果的な交渉術を解説します。

交渉のタイミングを見極める

単価交渉を成功させるためには、タイミングが非常に重要です。もっとも効果的なタイミングは、案件の契約更新時やプロジェクトで大きな成果を出した直後です。

契約更新時にはクライアントとの単価交渉も行われることが多いため、会社としてもエンジニアの希望を聞き入れやすい状況にあります。

また自分がプロジェクトに大きく貢献した直後であれば、具体的な実績を根拠に交渉を進めることができるでしょう。

大きな貢献をしたといえる直後のプロジェクト更新であれば、上記2点が重なり合ってより単価交渉はしやすくなります。クライアント側も「ぜひ残って成果を出してほしい」と思ってくれているならば、単価は上がっていきます。

貢献度と実績を具体的に提示する

単価交渉は感情で行うものではありません。自分の単価を上げるためには、客観的な事実に基づいた具体的な実績を提示することが不可欠です。

例えば、以下のような実績などです。

  • 〇〇の機能開発で、納期を1週間短縮できた。
  • 〇〇のバグを早期に発見し、クライアントの損失を防いだ。
  • 業務効率化ツールを導入し、〇〇の業務を継続的に〇時間短縮した。

このように、自分の貢献がプロジェクトにどのようなプラスの影響を与えたかを数字や事実で示しましょう。これにより、会社側はあなたの価値を再認識し、単価交渉に応じやすくなります。

次に挑戦したい技術や役割を明確にする

単価交渉の際には、「なぜ単価を上げたいのか」だけでなく、「単価を上げたら、会社にどのような貢献ができるのか」という未来志向の視点も提示することが重要です。

例えば「〇〇の技術を習得し、次のプロジェクトではリーダーとしてチームを引っ張りたい」といったキャリアプランを具体的に伝えましょう。

これにより、会社側はあなたの成長意欲を評価し、単価を上げることでさらなる貢献を期待できるようになります。

株式会社KAIZEN Tech Agentで納得しながら市場価値を上げよう

自分の単価を知れれば問題ありませんが、なかなかそうはいかないのが現実です。

重要なのは、単価は「知るもの」ではなく「高めるもの」であると意識することではないでしょうか。

単価を知ることに固執するのではなく単価を「高める」ための努力に焦点を当て、自分の市場価値を客観的に把握し、能動的にキャリアを築くことが不安を解消する最善の方法です。

不満な環境で我慢しつづける必要はありません。エンジニアの成長を応援してくれる優良なSES企業は必ず存在します。

私たちKAIZEN Tech AgentもSES企業として登録してくれたフリーランスエンジニアに向けて、キャリアプランに寄り添った案件紹介を行っています。

SESの優良企業を探しているなら、私たちをぜひ候補として検討してみてください。