SESで客先常駐として働く場合、多くのエンジニアが気になるのが「待機期間」です。プロジェクトが終わってから次の仕事が決まるまでの期間を指し、報酬の扱いや過ごし方は契約先ごとに大きく異なります。

制度を理解せずに契約を結んでしまうと収入が不安定になる恐れがありますが、正しく知っておけばリスクを回避できるだけでなく、自己研鑽の時間として前向きに活用できます。

この記事では、待機期間の定義や発生理由から、報酬の仕組み、リスクと対処法、さらに成長につなげる具体的な方法までを整理します。

SESにおける待機期間の基本事項

SESで客先常駐として働くエンジニアにとって、待機期間は報酬やキャリアに直結する重要なテーマです。にもかかわらず、事前に待機期間の仕組みを理解せず仕事を始めてしまい、「思っていたより待機が長い」「報酬が減った」と戸惑うケースも少なくありません。

ここでは、待機期間がどのような仕組みで発生するのか、平均的にどれくらい続くのかを整理します。さらに、案件期間との違いや、待機が長引く主な原因についても解説します。

待機期間とは?平均期間と発生理由

待機期間とは、SES契約に基づく案件が終了してから次の案件が決まるまでの空白期間を指します。案件単位で働くこの契約特有の仕組みで、報酬やキャリアに直結する重要な要素です。

発生理由には以下のようなケースがあります。

  • 研修後に常駐先(配属先)が見つからない
  • 担当していたプロジェクトの終了
  • 案件の条件とエンジニアのスキルが合わず、面談に通らない
  • 不況や案件数の減少によって、全体的に待機が増える

平均すると数日から数週間ですが、条件によっては1か月以上に及ぶ場合もあります。待機期間の仕組みと発生要因を理解しておけば、不安を減らし、契約先選びやキャリア設計に役立てられるはずです。

待機期間とSES案件の平均期間の違い

待機期間と案件期間は同じように見えて、性質がまったく異なります。

  • 案件期間:実際に業務に従事している時間
  • 待機期間:案件が終わってから次の仕事が決まるまでの空白の時間

期間の特徴を表に整理しました。

項目 案件期間 SES契約における待機期間
内容 開発・保守など業務を行っている期間 次の案件が決まるまでの空白期間
平均期間 1か月〜半年など短期契約が多い 数日〜数週間、条件によっては1か月以上
影響 実務経験を積む場になる 収入やキャリア形成に直接影響する

案件期間はスキルを磨く「実務の時間」、待機期間は条件によって長さが変わる「空白の時間」と整理すると理解しやすいでしょう。

待機期間が長くなる要因

待機期間は必ずしも短期間で終わるとは限らず、条件によっては1か月以上続く場合もあります。

主な要因は以下の通りです。

  • 営業力が弱い契約先:案件数が少なく、紹介までに時間がかかりやすい
  • スキルと案件のミスマッチ:技術要件とエンジニアのスキルが合わず、面談が通らない
  • 市況の悪化:不況や案件数の減少により、全体的に待機が増える傾向がある

待機期間の長さは個人のスキルだけでなく、営業力や景気など外部要因にも左右されます。リスクを減らすには、案件数の豊富さや直請け比率など契約先の体制を確認することが重要です。

SESにおける待機期間中の給料と身分の扱い

SES契約で働くエンジニアが待機期間に入ったとき、最初に不安を抱きやすいのは「報酬はどうなるのか」「契約が継続されるのか」という点です。

ここでは、以下の3つを中心に整理します。

  • 社内待機と自宅待機での報酬の違い
  • 待機期間に契約終了となる可能性
  • 待機中に副業やアルバイトはできる?

それぞれを確認しておけば、待機期間を不安なく乗り越えるヒントになります。

社内待機と自宅待機での報酬の違い

SESで客先常駐として働くエンジニアにとって、待機期間中に報酬が支給されるかどうかは、「勤務扱い」か「休業扱い」かの違いによって変わります。

区分 扱い 報酬 注意点
社内待機 通常業務扱いになるケースが多い 満額支給されるのが一般的 勤務扱いのため、社内業務を行う場合がある
自宅待機(勤務扱い) 出社義務なしだが勤務扱い 満額支給される 企業によっては出勤を求められるケースがある
自宅待機(休業扱い) 労基法上の休業として扱われる 平均賃金の6割以上が休業手当として支給 支給割合や基準は契約条件により異なるため、必ず確認が必要

報酬の仕組みを理解しておけば収入面の不安を減らせ、待機期間を前向きに活用しやすくなります。状況を想定し、準備しておくことが、キャリア形成において大切です。

参照:労働基準法第26条で定められた休業手当の計算について|厚生労働省

待機期間に契約終了となる可能性

SESで働くエンジニアが契約参画している場合、待機を理由に契約が終了する可能性は、契約形態によって異なります。

<契約社員・派遣社員・フリーランス>

  • 契約満了時に更新が行われないと、実質的に契約が終了する場合がある
  • 契約継続の可能性や更新基準は、契約前に確認しておくことが重要

<正社員>

  • 待機を理由とした解雇は認められない(労働契約法第16条)
  • 解雇を行う場合は30日前の予告、または解雇予告手当が必要(労働基準法第20条)
  • 案件がなくても給与支払い義務があるため、待機だけを理由に解雇するのは違法

参照:雇用・労働労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール|厚生労働省

待機期間中に副業やバイトはできる?

フリーランス契約の場合、待機中に副業やアルバイトを行えるかどうかは契約内容によって変わります。

基本的には自由に活動できますが、競業避止義務や守秘義務に関する条項が設けられている場合は制約を受けることがあります。副業を検討する際は、必ず契約条件を確認し、不明点は事前に確認しておきましょう。

一時的な収入を補う手段として副業を選ぶ人もいますが、長期的には「待機が少なく安定して案件参画できる契約先を選ぶ」ことが重要です。待機期間は、収入補填の方法を考えるだけでなく、今後の働き方やキャリア設計を見直すきっかけにするとよいでしょう。

SESにおける待機期間の有効な活用方法

SESで働くエンジニアにとって、待機期間は収入やキャリア面で不安を感じやすい一方で、使い方次第では大きな成長のチャンスになります。案件が途切れた時期を「空白」と捉えるか「準備期間」と捉えるかで、その後のキャリアの進み方は大きく変わるはずです。

ここでは、待機中にできる具体的な取り組みを紹介し、次の案件やキャリアアップにつなげる方法を整理していきましょう。

  • スキルの棚卸しを行い自己研鑽を積む
  • 資格取得やキャリアプランを見直す
  • IT特化のエージェントに相談する

スキルの棚卸しを行い自己研鑽を積む

待機期間は一見するとマイナスに思えますが、スキルや実績を整理し、新しい技術を学ぶ絶好のチャンスです。これまで携わった契約案件での業務内容や成果を洗い出して整理すれば、次の案件で役立つ強みを明確にできます。

さらに、自己研鑽として新しいプログラミング言語やツールを学び直すと、市場価値を高められます。待機を前向きにとらえ、学習や情報収集の時間として活用すれば、モチベーションの維持にもつながるでしょう。

資格取得やキャリアプランを見直す

待機期間は、キャリアを考え直す大切な時間です。短期的な収入補填だけでなく、資格取得やキャリアプランの再設定に取り組めば、案件選びの幅が広がり、長期的な成長につながります。特に需要が高い資格を計画的に学習すれば、市場価値を高められるでしょう。

例えば、次のような資格はエンジニアとしての評価を高めやすい例です。

  • AWS認定資格(クラウド技術の基礎から応用までを証明できる資格)
  • 情報セキュリティマネジメント試験(情報漏えいや攻撃対策に関する知識を証明できる国家資格)

さらに、3年後や5年後にどのようなキャリアを歩みたいかを具体的に描き、次に手がけたい案件や目指す職種を整理しておくと、契約切替やキャリアチェンジの判断がしやすくなります。

待機期間を「将来の方向性を再確認する準備期間」と捉えれば、次のステップに向けた自信と安心感を得られるでしょう。

IT特化のエージェントに相談する

待機期間が長引くと不安が大きくなりますが、IT特化のエージェントを活用すれば現状を客観的に見直すきっかけになります。

IT業界に特化したエージェントであれば、SES案件を多数取り扱う企業情報を得られるほか、自分の市場価値を把握でき、今後のキャリアプランを再構築する手助けになるでしょう。現職にとどまるか、別の契約先や開発案件に移るかを判断する際にも有益な情報源となります。

エージェントを利用する際に得られる具体的なメリットには、次のようなものがあります。

  • 面談を通じて、スキルや経験がどの程度評価されるかを知ることができる
  • 自社開発や直請け案件を取り扱う企業を紹介してもらえる可能性がある
  • 希望に合ったキャリアパスや契約更新時期についてアドバイスを受けられる

上記を踏まえてエージェントを活用すれば、待機期間が続く不安を軽減し、次の行動に移しやすくなるでしょう。

SESにおける待機期間を抑える企業選びのポイント3つ

待機期間を短く抑えるためには、エンジニア本人のスキルだけでなく、契約先の体制や方針を見極めなければなりません。特に次の3つの観点を確認しておくと、安心して働けるかどうかを判断しやすくなります。

  1. 営業力と案件数が豊富かどうか
  2. 待機期間の運用と報酬保証があるか
  3. 研修制度やスキル支援が整っているか

1.営業力と案件数が豊富かどうか

営業力が強く、案件数が多いSES企業を選べば、待機期間を短く抑えやすくなります。案件の選択肢が多ければ、自分のスキルに合う現場を早く紹介してもらえ、次のアサインがスムーズに決まるからです。

例えば、直請けや一次請けの案件を多く抱える契約先は、案件数だけでなく条件の良い案件を揃えている傾向があります。さらに、幅広い業界や技術分野を扱う企業であれば、希望や適性に合わせたマッチングが可能です。

そのため、企業選びの際には以下の観点をチェックすると安心です。

  • 直請け案件の割合
  • 平均待機期間
  • 扱う案件の幅(業界・技術分野)

これらを確認しておけば、待機リスクを避けながらキャリアを築きやすくなるでしょう。

2.待機期間の運用と報酬保証があるか

待機中の報酬支給ルールを事前に確認しておくことは、安心して働くために欠かせません。契約先によって待機の取り扱いが異なり、社内待機は報酬満額であっても、自宅待機では減額や無報酬になるケースがあるからです。

制度を把握していないと「思ったより報酬が減った」といった不安やトラブルにつながりやすくなります。

例えば、社内待機では研修や社内業務に従事すれば報酬が通常どおり支払われる場合が多い一方、自宅待機では「勤務扱い」か「休業扱い」かで支給割合が変わります。さらに、待機が長期化した際にどのようなサポートがあるかは契約先によって大きく差があるのです。

確認すべきポイントは次の3つです。

  • 社内待機時にどのような業務や研修があるか
  • 自宅待機時の報酬支給割合が明示されているか
  • 待機が長期化した場合の対応策があるか

3.研修制度やスキル支援が整っているか

待機期間をスキルアップの時間として活用できるかどうかは、契約先が用意している研修制度や支援体制に大きく左右されます。

教育制度が整っていれば、待機中であっても実務に近い知識や技術を習得でき、将来のキャリアに直結する学びを得やすくなります。

例えば、契約後に体系的な研修プログラムが設けられている契約先や、待機期間中に参加できる勉強会・ツール開発の機会を提供している契約先は、成長意欲を持つエンジニアにとって大きなメリットとなるはずです。

また、キャリア形成をサポートする専任担当者がいる場合は、学習計画やキャリアパスについて相談しやすく、安心してスキルアップを継続できるでしょう。

確認すべきポイントは、次の3つです。

  • 契約後の研修内容や学習支援が充実しているか
  • 待機期間中に勉強会やツール開発へ参加できるか
  • キャリア形成を支援する専任担当者が存在するか

SESの待機期間が少ない働き方とは

SESで働くエンジニアにとって、待機期間をなるべく短く抑えるには、働き方そのものの選び方も重要です。どのような案件や契約形態に関わるかによって、次の案件が決まるスピードや安定性が変わります。

待機が少ないとされる働き方には、主に以下の3つがあります。

  •  自社開発や受託開発
  • フリーランスや派遣
  • 長期案件や上流工程に関わる

 自社開発や受託開発

自社サービスや受託開発に関わる場合は案件が途切れにくいため、待機期間がほとんど発生しません。なぜなら、長期プロジェクトが多く、継続的に人材が必要とされるからです。

具体的には次のような特徴があります。

働き方 待機リスク メリット デメリット
自社開発 案件が途切れにくく、待機はほぼ発生しない ・長期に関われる
・専門性を深められる
プロジェクトや技術領域が限定されやすい
受託開発 契約期間が定められて、安定しやすい 案件が多様で経験の幅を広げられる 契約終了後に次の案件に移る必要がある

このように、自社開発や受託開発は安定性を重視する人に適した働き方であり、専門性を深めたいエンジニアにも向いているでしょう。

フリーランスや派遣

フリーランスや派遣という働き方も待機期間が少ない傾向にあります。ただし、安定性や成長の機会に制約があるため注意が必要です。

具体的には次のような特徴があります。

それぞれの特徴と向いている人物像を整理すると次の通りです。

働き方 待機リスク メリット デメリット
フリーランス 営業力があれば待機は少ないが、案件獲得は自己責任 高単価・自由度が高い 営業を怠ると収入が途切れる、安定性が低い
派遣 短期案件が多く、待機が発生しにくい 案件が豊富で、安定して仕事を得やすい 単価が低め、スキルアップの機会が限られる

フリーランスや派遣は「自由度の高さ」と「安定性の低さ」のバランスを見極めることが求められます。柔軟に働きたい人に適していますが、キャリアをじっくり積みたい人には慎重な判断が必要です。

長期案件や上流工程に関わる

長期案件や上流工程に携わる場合、契約が継続しやすく、待機を短縮できます。長期的に人材が必要なプロジェクトや、要件定義・設計といった上流工程を担える人材は、企業にとって継続的な需要があるからです。

具体的な特徴は以下の通りです。

働き方 待機リスク メリット デメリット
長期案件 プロジェクトが継続するため待機が少ない ・安定して働ける
・専門性を深められる
プロジェクト変更が少なく、経験の幅が限定される
上流工程 要件定義や設計に携わる人材は、需要が高く待機が短い ・キャリアアップにつながりやすい
・次の案件が決まりやすい
高いスキルが求められる

例えば、複数のスキルを身につけておけば面談にも通りやすく、営業担当と連携して早期に次の案件を探せます。結果として、待機の空白期間を最小限に抑えられる働き方といえるでしょう。

待機期間中も成長できる!株式会社KAIZEN Tech Agentで安定したSESキャリアへ

待機期間はエンジニアにとって不安要素になりがちですが、契約先の営業力や案件数、報酬保証の仕組み、研修制度を見極めればリスクを大きく減らせます。さらに、自社開発や長期案件、上流工程といった働き方を選べば、安定性と成長を両立しやすくなるでしょう。

株式会社KAIZEN Tech Agentは、営業担当が案件探しから参画後まで継続的にサポートする体制を整えています。単に案件を紹介して終わりではなく、現場での課題やキャリア形成まで一緒に考えながら支援する点が強みです。

相談ベースからでも大歓迎ですので、キャリアに迷わず次の一歩を踏み出すために、まずはお気軽にご連絡ください。