DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速により、企業の開発現場では外部パートナーの力を活用する動きが広がっています。中でも、SES(システムエンジニアリングサービス)を提供する大手企業は、開発体制の一翼を担う重要な存在となっています。

かつてはエンジニアが顧客先で常駐し、指示に従って作業を行う形が主流でしたが、近年は「共創型」のプロジェクトが増え、企業のDX支援やシステム内製化の推進役を務めるケースが多くなりました。この流れにより、エンジニア自身がスキルを磨きながら高単価案件に参画するチャンスも拡大しています。

本記事では、2025年時点で注目される大手SES企業を売上や年収、得意分野といったデータから比較し、業界の最新動向を整理します。さらに、SES企業選びのポイントや成長領域も紹介し、キャリアアップを目指す方に実践的な視点を提供します。

DX時代における大手SES企業の市場動向とフリーランス需要

DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、IT開発を外部パートナーと連携して進める企業が増えています。その中心にあるのがSES業界であり、いまや企業の技術力や人材確保を支える欠かせない存在となっています。ここでは、DX時代におけるSES市場の拡大と、フリーランスエンジニアの需要動向を詳しく見ていきます。

SES業界が拡大している背景

近年、企業のDX推進が一気に加速したことで、開発体制の見直しを迫られる企業が増えています。自社内の人員だけでは新技術の導入や短納期の開発に対応しきれず、専門スキルを持つエンジニアを柔軟に確保できるSES(システムエンジニアリングサービス)の活用が広がっています。

特に大手SES企業は、官公庁や大手メーカー、金融機関などとの取引実績を背景に、外注開発や共同開発プロジェクトを積極的に展開しており、案件数も増加の一途をたどっています。

また、働き方改革や人材の流動化が進んだことで、フリーランスエンジニアが大手案件に参画する機会も着実に増えています。SES業界は、単なる人材派遣の枠を超え、技術力を持つプロフェッショナルが柔軟に活躍できる新しい働き方を支える基盤として存在感を高めています。

SES企業が担う役割の変化

かつてのSESは、クライアント先に常駐して業務を支援する「外部リソース」としての側面が強いものでした。しかし、DX時代を迎えた今、その役割は大きく変化しています。

企業が自社でシステムを内製化しようとする流れの中で、SES企業は単なる作業請負ではなく、共創型の技術パートナーとしての立場を確立しつつあります。要件定義や設計段階からプロジェクトに参画し、開発だけでなく運用・改善までを継続的にサポートするケースも増えています。さらに、受託開発やクラウド移行支援を併用する企業も多く、プロジェクト全体を俯瞰できるエンジニアが重宝される傾向にあります。

スキルや実績次第では、大手企業と直接契約し、より高単価な案件に関わるチャンスも拡大しています。SESは今、単なる「常駐型業務」から脱し、企業の成長をともに支える共創型ビジネスへと進化しています。

SES企業の大手ランキングTOP10【最新データ】

SES業界は、上場SIerから独立系企業まで多様な企業が存在し、それぞれが異なる強みを持っています。ここでは、最新の公開データをもとに、大手SES企業10社の売上・平均年収・得意分野を比較し、業界全体の傾向と特徴を整理します。

年収・売上・得意分野で見る大手SES企業10社の比較

最新の有価証券報告書や決算資料をもとに大手SES企業を比較すると、業界の多様性と成長力が浮き彫りになります。

富士ソフトやNSDのような上場企業は、売上規模が大きく、公共・金融・製造といった幅広い領域で安定した案件を展開しています。クラウドやAIなどの新技術分野では、コムチュアやシステナといった企業が先行し、AWSやMicrosoft認定パートナーとして技術支援を拡大しています。また、鈴与シンワートのように物流やBPOなど特定分野に特化する企業もあり、専門性の高さで競争優位を築いています。

平均年収を見ると、企業によって開発領域や契約形態の違いが反映されており、キャリア志向やライフスタイルに合わせた選択がしやすくなっています。

このランキングを通じて、自分のスキルや志向に合ったSES企業を見極めるための指標を得ることができます。

順位(売上高) 企業名 売上高 特徴 得意分野・主力領域 平均年収
1 富士ソフト 約2,787億円 ・技術と開発規模の大きい案件が豊富

・組込みからクラウドまで幅広い事業を展開

・組込・制御系

・業務系アプリ

・クラウド移行

・セキュリティ

・ソフトウェア基盤

640万円
2 NSD 約1,077億円 ・官公庁/学校/病院などの公共事業に強み

・設計/開発/保守/運用を自社内で完結できる体制

・ITコンサル

・業務系開発

・インフラ構築

・運用保守

3 DTS 約1,061億円 総合SIerとして、金融/通信/公共など幅広く、コンサル~保守まで一気通貫で対応 ・金融/通信/公共システム、DX支援

・クラウド/インフラ構築

601万円
4 システナ 約745億円 ・DX支援やモビリティ/クラウド分野に注力

・若手教育・社内研修にも強み

・車載ソフト

・IoT

・クラウド

・アプリ

・検証サービス

458万円
5 TDCソフト 約396億円 ・組込制御/SI/クラウドなど幅広い領域で技術支援

・品質管理にも強み

・組込/制御系

・クラウド開発

・ソフトウェア設計/検証

622.5万円
6 フォーカスシステムズ 約332億円 官公庁/自治体系のシステム開発に強い独立系企業 ・セキュリティ

・金融/流通/公共システム

・情報サービス

7 コムチュア 約363億円 ・クラウド導入/データ分析に強い

・AWSやMicrosoft Azureなどの認定も多数

・クラウド導入支援

・データ分析

・DXコンサルティング

600万円
8 鈴与シンワート 約191億円 ・鈴与グループのIT中核企業

・物流/インフラ/BPOに特化

・物流システム

・クラウド/インフラ

・アウトソーシング

652万円
9 ソルクシーズ 約170億円 ・金融/通信などの業務システムに強い独立系SIer

・SES事業と受託を併用

・金融システム

・Web/業務系アプリ

・モバイル通信

10 昭和システムエンジニアリング 約83億円 ・長年にわたり保険/金融システムを開発

・安定志向の顧客基盤を持つ

・金融/保険システム

・業務システム構築

・運用支援

600万円

注:売上高と平均年収は、2025年10月直近の公開値に基づきます。

ランキング上位のSES企業に共通する強み

ランキング上位に位置するSES企業には、共通していくつかの特徴が見られます。売上や年収の数字だけでは測れない強みがあり、それが長期的な成長と信頼につながっています。ここでは上位企業に共通するポイントを具体的に見ていきます。

安定した経営基盤と豊富な取引実績

上位にランクインするSES企業の多くは、長年にわたって大手SIerや上場企業との直接取引を積み重ねてきた実績を持っています。これにより、経営基盤が安定し、継続的に質の高い案件を受注できる体制が整っています。

取引先の幅も広く、金融・通信・製造・公共といった多様な業界と関わることで、景気変動に左右されにくい強みを発揮しています。さらに、信頼関係に基づいた長期契約が多いため、エンジニアが腰を据えてキャリアを築ける環境が整っている点も魅力です。

こうした堅実な取引実績と安定性が、上位SES企業の競争力を支える重要な要素となっています。

エンジニア育成に注力した教育体制

上位のSES企業では、エンジニア一人ひとりのスキルアップを重視し、体系的な教育プログラムを整備しています。入社時の基礎研修に加え、クラウドやAI、セキュリティなどの先端分野に対応するための専門講座や資格支援制度を導入する企業も多く見られます。こうした継続的な育成環境により、エンジニアが現場で即戦力として活躍できる体制が整っています。

また、キャリアパスを明確に示し、将来的にリーダー職やアーキテクトを目指せる仕組みを構築している点も特徴です。人材を「資産」として育てる姿勢が、企業全体の技術力向上と高品質なサービス提供につながっています。

顧客とエンジニア双方を支えるフォロー体制

上位のSES企業では、案件を紹介して終わりではなく、配属後のフォロー体制に力を入れています。営業担当やキャリアアドバイザーが定期的に面談を行い、現場での課題やキャリアに関する悩みを丁寧にヒアリングする仕組みを整えています。これにより、エンジニアが安心して長期的に働ける環境が保たれています。

さらに、顧客企業との連携も密に行われており、プロジェクトの成果や業務改善の提案など、信頼関係を深める取り組みが進んでいます。エンジニアとクライアント双方をサポートする体制が、上位企業の高い満足度と継続的な成長を支える基盤になっています。

SES企業選びで意識すべき3つのポイント

SES企業を比較するときは、売上や知名度だけで判断するのではなく、自分の働き方や成長に直結する要素を見極めることが大切です。ここでは、安心して長く働ける企業を選ぶために注目すべき3つのポイントを解説します。

契約形態とマージン率の透明性を確認する

SES企業を選ぶうえでまず確認したいのが、契約形態とマージン率の透明性です。契約が「準委任契約」か「派遣契約」かによって、業務の自由度や責任範囲が大きく異なります。たとえば準委任契約では成果よりも業務遂行を重視するため、スケジュールや働き方に柔軟性を持てる一方、派遣契約では勤務条件がより明確に定められます。

また、マージン率が不透明な企業では、実際の報酬が相場より低くなるリスクもあります。単価や還元率を開示しているかどうかは、信頼できる企業かを見極める大きな指標になります。

案件の質とキャリア形成の相性を見極める

案件を選ぶときは、報酬の高さだけで判断するのではなく、自分のキャリアにどんな経験が積み上がるかを意識することが大切です。たとえば、最新技術の導入やクラウド・AIなどの成長分野に関わる案件であれば、将来的な市場価値を高めやすくなります。

また、要件定義や設計フェーズに携われる環境を選ぶことで、マネジメントや上流工程へのステップアップも見込めます。SES企業によって扱う案件の業種や規模は異なるため、今のスキルと今後の目標を照らし合わせ、最適な環境を選ぶ視点が欠かせません。

フォロー体制と評価制度の充実度を確認する

配属後のサポート体制が整っているかどうかも、SES企業を選ぶうえで重要な判断基準になります。現場での課題や働き方の悩みを相談できる担当者がいれば、ストレスを抱えずに長く働きやすくなります。

さらに、評価制度が明確で、成果やスキルがしっかりと単価や昇給に反映される仕組みがある企業は信頼できます。定期的な面談やキャリア相談の場を設け、エンジニアの成長を支援する文化が根付いているかを確認することで、安心してキャリアを積み重ねていけます。

大手SES企業が注力する最新技術領域

最新技術の動向を的確に捉えることは、SES企業の競争力を左右します。特に大手企業は、クライアントのDX推進を支援するために、需要が急拡大する分野への対応を急速に進めています。ここでは、今まさに注目されている主要3領域の取り組みを紹介します。

クラウド・インフラ分野

クラウド環境の導入が急速に広がる中で、多くの企業がオンプレミスからクラウドへの移行を進めています。これに伴い、SES企業でもAWSやMicrosoft Azureなど主要クラウドのスキルを持つエンジニアの需要が高まっています。

大手企業では、資格取得支援や社内研修を通じて専門人材を育成し、クラウド導入・運用・セキュリティまでを一貫してサポートできる体制を整えています。こうした取り組みは、企業のDX推進を支えるとともに、エンジニアにとっても市場価値を高める絶好の機会となっています。

AI・データ分析・機械学習領域

AIやデータ分析の分野では、企業の意思決定を支える基盤づくりが進んでおり、SES企業の役割も拡大しています。大手では、機械学習モデルの開発支援やPoC(概念実証)案件を受託するケースが増え、データエンジニアやAIエンジニアの育成にも力を入れています。

また、クラウド上でのデータ分析基盤構築やBIツール導入支援など、業界横断的なプロジェクトも増加中です。AIを中心とした高度技術領域への対応力が、SES企業の競争優位を高める要因となっています。

セキュリティ・ゼロトラスト対応

サイバー攻撃の高度化や情報漏えいリスクの増大を背景に、セキュリティ対策の重要性は年々高まっています。特に政府機関や金融機関を中心にゼロトラストモデルの導入が進んでおり、大手SES企業でも専門エンジニアの育成が急ピッチで進められています。

ネットワーク防御だけでなく、認証管理やクラウドセキュリティ、脆弱性診断など多岐にわたる分野で支援体制を整え、企業の安全なDX推進を支えています。こうした取り組みが、SES企業の信頼性と技術価値をさらに高めています。

SESの優良企業を見極めて高単価な働き方を実現しよう

SES業界で安定したキャリアと高い報酬を得るためには、感覚的な印象ではなく、売上・年収・得意分野といった客観的なデータをもとに企業を比較することが欠かせません。大手や上位企業には、安定した経営基盤に加え、成長性のある分野に挑戦できる環境が整っており、エンジニアがスキルを磨きながら長期的に活躍できます。

特にフリーランスとして働く場合は、報酬の高さだけでなく、自身のスキルアップや将来の方向性と合致しているかを見極めることが重要です。自分の強みを活かせるSES企業を選び、戦略的にキャリアを築いていくことで、より高単価で安定した働き方を実現できます。