SESエンジニアとして働いている方のなかには、「もう辞めたい」と日々感じている方もいるかもしれません。

しかしその気持ちは、本当にSESエンジニアという働き方そのものが合わないからではなく、今の会社や現場が合わないだけかもしれません。

 この記事では、漠然とした「辞めたい」という感情を整理し、エンジニアとしてのキャリアパスを広げるための考え方をお伝えします。

自分にとって最適な働き方を見つけるための判断軸を身につけ、納得のいく次のステップを踏み出しましょう。

SESを辞めたいと思ったら気持ちの整理から始める

 

「辞めたい」という衝動的な気持ちを、まずは具体的な不満に分解してみましょう。

感情に流されるのではなく、論理的な思考で現状を客観的に分析することが次のステップを考える上で非常に重要です。

自分の現状を正確に把握することで、本当に辞めるべきなのか、それとも別の解決策があるのかが分かってくるでしょう。

辞めたい理由をチェックリストで自己診断

なぜSESを辞めたいと感じるのか、その理由をはっきりさせてみましょう。いくつかの代表的な理由をチェックリストにしました。当てはまる項目があるか確認してみてください。

  • 給与:自分のスキルや労働時間に対して、給与が低いと感じる。
  • 人間関係:現場の人間関係がうまくいかず、精神的に疲れてしまう。
  • スキルアップ:新しい技術を学ぶ機会がなく、自身の成長が停滞していると感じる。
  • 会社のサポート体制:会社が待機期間の保障やキャリア支援を十分に行ってくれない。
  • 将来性:SESエンジニアとして、このままキャリアを続けていくことに不安がある。
  • エンジニア職との相性:そもそもエンジニアという仕事自体が自分に合っていないかもしれないと感じる。

これらの理由を一つひとつ見つめ直すことで、漠然とした不安が具体的な課題へと変わります。

その不満は本当に「SES」という働き方のせいか確認

辞めたい理由がはっきりしたら、次にその不満が本当にSESエンジニアという働き方そのものに起因するのか、それとも今の会社や現場の問題なのかを見極めましょう。

  • 自分に合う案件を紹介してもらえない
  • アサインされた現場が合わない
  • 営業に知識がなくエンジニアスキルの会話ができない
  • なかなか案件にアサインされず待機期間が長い
  • 待機期間中の給与保障がない

上記のような不満は多くの場合、今の会社や登録企業の営業力・サポート体制の弱さに原因がある可能性があります。

SESエンジニアのメリットである「様々なプロジェクトを経験できること」や「安定した給与」といった部分に魅力を感じているのなら、SESエンジニアという働き方自体は自分に合っているのかもしれません。問題はSESの業態ではなく、所属している会社にあるのかもしれないのです。

反対に、「エンジニアという仕事自体が合っていない」のであれば、SESだけでなくエンジニア職を続けることそのものを疑ったほうがいいかもしれません。

このように、辞める前に不満をじっくり考えることで、より良い解決策を講じることができるでしょう。

「なぜ」を繰り返して不満の根本を探る

自分の不満を明確にするために、「なぜ」という問いかけを繰り返すことが効果的です。

例えば「給与が低い」と感じている場合、さらに「なぜ給与が低いと感じるのか?」と問いかけてみましょう。その答えが「同じスキルレベルの友人と比べて」だったとします。さらに「なぜ友人は高い給与をもらえているのか?」と問うことで、「直請け案件が多く、還元率が高い会社にいるから」という根本的な理由にたどり着くかもしれません。

このように表面的な不満だけでなく、その背景にある真の原因を掘り下げることで、解決すべき課題がより明確になります。辞めるという決断は、こうした自己分析を経て、論理的な結論として導き出されるべきものです。

感情的な判断ではなく、根拠に基づいた行動こそが、後悔のないキャリア選択につながります。

現状の「良い点」と「悪い点」を書き出す

不満な点ばかりに目を向けるのではなく、現状の良い点にも意識を向けてみましょう。

例えば以下のような書き出し方です。

<悪い点>

  • 給与は低いと感じる
  • スキルアップの機会が少ない

<良い点>

  • 残業がなくワークライフバランスが取れている
  • 人間関係が良好でストレスなく働ける

「良い点」と「悪い点」を書き出して可視化することで、現状を多角的に捉えることができます。もしかすると、不満な点だけを見ていたときには気づかなかった、今の環境ならではのメリットが見つかるかもしれません。

また、次に転職したり登録したりする会社を選ぶ際に、何を重視すべきかの判断軸を明確にする上でも非常に役立ちます。

SESを辞めたいならエンジニアのキャリアの選択肢を知っておこう

今の会社を辞めたり、登録SES企業から離れたいと思ったときに、エンジニアとしてのキャリアの選択肢は複数あります。

それぞれの働き方の特徴を理解し、自分の希望や価値観に合った道はどれなのかを考えてみましょう。

自社開発企業や事業会社へ転職

自社開発企業や事業会社は、自社のサービスやプロダクトを開発・運用しています。

腰を据えてじっくりと一つの製品の開発に取り組みたい人や、自分が作ったサービスがユーザーに届く喜びを直接感じたい人に向いています。

SESエンジニアとは異なり、長期的に同じチームで働くため人間関係も安定しやすいといえます。ただし、SES企業に比べて採用のハードルが高くなる傾向があり、一定以上の専門性や開発経験が求められます。

SIerになり上流工程に関わる

SIer(System Integrator)とは、クライアントの課題を解決するために主にITシステムの企画・設計から開発、運用までを請け負う業種のことです。

SESでは開発やテストといった下流工程が中心になる傾向がありますが、SIerでは要件定義や基本設計といった上流工程に携わる機会が増えます。

プロジェクト全体を俯瞰し、クライアントと密にコミュニケーションをとりながら進めていきたい人に向いている働き方です。ただし、SIerも採用基準が高く志望しても採用されるとは限りません。また、現場で手を動かすタイプの仕事ではないため、「自分が開発を主導している」という実感を感じにくい人もおり、物足りないと思う可能性があります。

完全に独立したフリーランスになる

フリーランスは、特定の組織に属さず、個人事業主として案件ごとに契約を結びます。

企業やエージェントに登録したりすることもできますが、それらから離れ、完全に独立して自分の力だけで活動するフリーランスになることも選択肢の一つです。

自分のスキルや経験が直接評価されるため、開発の実感やエンジニアとしてやりがいを感じられるという特徴があります。

また間に入る企業がないため、受け取った金額がそのまま収入になるので収入が高くなりやすいのも大きな魅力です。働く時間や場所、仕事内容を自由に選べる裁量の大きさもメリットです。

しかし案件が途切れると収入がゼロになるというリスクや、営業活動・税務処理といった開発以外の業務をすべて自分でこなす必要があるため多忙になりやすいデメリットもあります。

別のSES企業へ転職

今の自分が抱える問題が、SESエンジニアという働き方そのものではなく、その会社特有のものである場合、別の優良なSES企業に転職することも選択肢の一つです。

例えば、営業力が強くエンジニアの希望を尊重してくれる会社に転職すれば、不満だった「現場が合わない」という課題は解消される可能性があります。

フリーランスエンジニアとしてSES企業へ登録

完全に独立したフリーランスと、SES企業に就職することの間のような選択肢です。

SESエンジニアという働き方は合っているが、特定の組織に縛られたりしたくなく、一定の支援は受けたいという人に向いています。

この場合も営業力が強くエンジニアの希望を聞いてくれるSES企業に登録すれば、現状の不満を解消できるでしょう。

それに加えて、会社組織に所属することから来るストレスからも解放される可能性もあります。

いきなり会社を辞めてから登録するのではなく、現職に所属しながらSES企業に登録し、ゆるやかにフリーランスに移行していく、という安全な方法もおすすめです。

SESを辞めたいという悩みを根本から解決する「優良」SES企業の見つけ方

状況を整理した結果、もし自分がSESエンジニアという働き方自体を辞めたいのではなく、今の会社に不満があるだけだと分かったなら、次は優良なSES企業を見つけて登録を検討しましょう。

同じ過ちを繰り返さないためにも、ここで具体的な会社の選び方を知っておきましょう。

案件の「質」と「量」を見極める

優良なSES企業は、ただ案件を数多くもっているだけでなく、その「質」にもこだわっています。

エンジニアのスキルや希望を尊重し、キャリアアップにつながるような魅力的な案件を豊富に提案できるかが重要です。面接時に直近の案件リストを見せてもらえるか尋ねてみるのも良いでしょう。

エンジニアへの高い還元率

透明性が高いだけでなく、エンジニアが納得できるだけの高い還元率があるかも重要です。

高い営業力があれば、案件の「量」も「質」も高くなり結果的に還元率を高く設定することが可能になります。

また、クライアントと直接契約を結ぶ「直請け」案件の割合が多い企業は利益率が高くなり、エンジニアへの還元率も高い傾向にあります。

そして何よりも、エンジニアが生む価値こそが会社にとっての最大の資産であり、エンジニアが働きやすい環境をつくることが重要だという思想をもった会社であることが大切です。  

定期的なキャリア面談の有無

優良なSES企業は、エンジニアのキャリアプランに真剣に向き合っています。そのため、定期的に営業担当者とのキャリア面談を実施し、次の案件への希望やスキルアップの方向性について細かくヒアリングする機会が設けられているのです。

もしあなたが今、「キャリアパスが見えない」という不安を抱えているのであれば、こうした面談の機会を設けてくれる企業を選ぶことは非常に重要です。登録の面談時に「キャリア面談はどのくらいの頻度で実施していますか?」と質問してみることで、会社のサポート体制の充実度を測ることができます。

技術支援や学習サポートの有無

案件にアサインされているときだけでなく、待機期間中や業務時間外でのスキルアップを支援してくれるかも重要な判断基準です。優良なSES企業は、技術書籍の購入費を負担してくれたり、資格取得手当を支給したり、社内勉強会を定期的に開催したりして、エンジニアの成長を後押しする体制を整えています。

こうした支援がある会社に所属することで、SESのデメリットである「スキルアップが自己責任になりがち」という課題を解消することができます。自分の成長を真剣に考えてくれる会社であれば、長く働き続けることができるでしょう。

SESを辞める前に見直すべき「働き方」と「価値観」

SESエンジニアを辞めるという大きな決断をする前に、一度自身の「働き方」と「価値観」について深く見つめ直してみましょう。

辞めることが唯一の解決策ではないかもしれません。働き方や価値観を少し変えるだけで、今の状況が好転することもあります。

「仕事=給料」ではない価値を見出す

仕事に対して「給料」という側面だけで価値を測っているかもしれません。もちろん収入は重要ですが、それ以外にも仕事を通して得られる価値はたくさんあります。

例えば「新しい技術に挑戦できる環境」「尊敬できる上司や仲間との出会い」「クライアントから直接感謝される喜び」などです。

もし今の案件に給与面で不満があっても、それ以外の面で大きなメリットがあるかもしれません。給与だけでは測れない「ワークライフバランス」や「キャリアアップ」に目を向けることで、仕事への満足度を向上させることができます。

労働時間の「質」を高める

長時間労働や残業が不満の原因であれば、まずは業務効率化を図り、労働時間の「質」を高めることに注力してみましょう。日々の業務を棚卸しし、自動化できる作業はないか、無駄な会議はないかなどを探すことで、生産性を向上させることができます。

また、所属するSES企業の営業担当者に相談し、より効率的な働き方ができる案件を探してもらうことも一つの方法です。働く時間を減らすだけでなく、その時間でより多くの成果を出せるよう工夫することで、結果的に収入アップや心身の健康、そして将来的なキャリアアップにつながります。

自分のキャリアは「自分でつくる」意識をもつ

SESエンジニアは、会社にキャリアを任せきりにしてしまうと、望まないキャリアに進んでしまうリスクがあります。不満を会社任せにするのではなく、「自分のキャリアは自分でつくる」という主体的な意識をもちましょう。

次の案件への希望を明確にしたり、営業担当者と積極的にコミュニケーションをとったり、自律的に学習を進めたりすることでキャリアの主導権を自分で握ることができます。

SESエンジニアという働き方は、主体的に行動することでいくらでも理想の働き方を築ける可能性を秘めた環境でもあります。

円満な退職・転職を成功させるための準備

ここまでお伝えしてきた自己分析や自問自答を経て、それでも「SES企業を辞めること」が最適な理由であることが分かったなら、それを実施する必要があります。

SES企業を辞める決断をした場合、円満な退職・転職を成功させるための準備が不可欠です。

感情的に会社や現場に不満をぶつけるのではなく、冷静かつ計画的に行動することで、次のキャリアへとスムーズに進むことができるでしょう。

退職の意思は書面で明確に伝える

口頭のみでの退職意思の伝達は、後々トラブルになる可能性があります。退職届やメールなど、書面で明確に意思を伝えることで、言った言わないの事態を避けることができます。退職希望日の2ヶ月前までには伝えるのが無難です。

また、退職理由を正直に伝える必要はありません。「一身上の都合」としておくのがもっとも問題ない理由です。具体的な理由を聞かれた場合は、「より上流工程に挑戦したい」「特定の技術を深めたい」など、前向きな理由を伝えるようにしましょう。

引き継ぎは丁寧に行う

退職・転職を円滑に進める上で、最も重要なのが引き継ぎです。後任者がスムーズに業務に入れるよう、業務内容やシステムの構成、注意点などをまとめたドキュメントを丁寧に作成しましょう。

引き継ぎが不十分だと、後任者やクライアントに迷惑をかけ、会社だけでなく「自分自身」の信用を損なうことになります。意外と業界は狭く、こういった評判は他社にも伝わってしまうものです。

円満な退職は、その後の業界内での働きやすさにもつながるため、最後までプロフェッショナルな対応を心がけましょう。

在職中に活動を進める

SES企業を辞めてから転職活動を始めるのではなく、在職中に次の転職先を探すことを推奨します。転職期間中に収入が途絶えるリスクを回避できるだけでなく、精神的な安定を保ちながら活動を進めることができます。

また、在職中の転職活動は、より有利な条件で交渉できる可能性も高くなります。希望する企業の採用状況や、自分の市場価値を把握するためにも、まずは情報収集から始めてみましょう。

もし、「転職」のハードルが高いなら、フリーランスSESエンジニアとしてフリーランス向けの案件を抱えているSES企業に登録してみるのも良いでしょう。案件の案内の打診を受けてから退職すれば、転職期間中に収入が途絶えてしまうことを防げます。

株式会社KAIZEN Tech Agentで辞めたくならないSESの現場を見つけよう

「SESを辞めたい」という悩みは、もしかしたら「今の会社を辞めたい」という潜在的な願望の現れだったのかもしれません。

この記事で得た知識を使って、自分に本当に合った働き方や会社を見つけていきましょう。

私たちKAIZEN Tech AgentもSES企業であり、登録してくれたフリーランスエンジニアの方に向けて案件をご紹介し、エンジニアのみなさんが納得のいく現場で働けるように支援しています。

もしSESを辞めたいと感じたら、まずは一度ご相談ください。